Review: RISING–虹を翔る覇者–(Rainbow)
収録曲
- Tarot Woman
- Run with the Wolf
- Starstruck
- Do You Close Your Eyes
- Stargazer
- A Light in the Black
前作のReview
Review: Ritchie Blackmore’s Rainbow–銀嶺の覇者–(Rainbow)
Rainbowの全アルバム中、最も重いサウンド
本作は、前作の“Ritchie Blackmore’s Rainbow(銀嶺の覇者)”と比較して、メンバーチェンジで獲得したCozy Powell(Dr.)のシンプルで力強いドラミングによって、Hard Rock然としたサウンドへと急激に様変わりしています。
メンバーチェンジの影響は、ドラムだけでなくサウンド全体に影響がありました。それもその筈で、前作をリリースしてから、わずか三ヶ月でRitchieとDIO以外のメンバーが全員入れ替わっています。Ritchieのお眼鏡に叶うメンバーを揃えた訳ですから、各パートの演奏力が底上げされ、サウンド全体の説得力が増しています。
本作のサウンドが最も重い理由は、以降のアルバムでRitchieが重さを追求しなかったためと思われます。次作(3rdアルバム)はミックスの関係でやや軽い音作りとなり、4thアルバムはバンドのポップ化によって軽さが増します。5th以降ではCozy Powellがバンドを去り、同じ重さが再現される事はありませんでした。つまり、90年代のバンドがグルーヴを追求した重さとは異なり、半ば偶然の産物で重さを得たのでは無いでしょうか。
重さに貢献しているのはCozy Powellだけでなく、DIOも貢献者の一人です。DIOの歌唱はブルース色が消え、現在のHR/HMに通ずるスタイルへと変化しました。印象的なメロディを力強く、響かせながら唄い上げます。
CozyとDIOの活躍によって、中低音域は音の厚みがあり、RitchieとTony Carey(Key.)が織りなす広がりのあるフレーズを下支えてくれました。特に、DIOは最初期の音楽キャリアと比較すると、大きな変化を感じます。以下の動画は、1962年(Risingの14年前)の音源ですが、柔らかな声でコブシがありません。
本作の評価は大半がB面(死語)
B面(死語)とは、何でしょうか。まずは、そこからです。私の世代(平成2年生まれ)では、「B面=c/w」という認識です。それより若い世代は、ダウンロード販売を通り越してストリーミング世代ですから、ますます意味が分からないと思います。
B面は、LP(レコード)の裏面に収録された曲を意味します。昔はLPの表面だけで全ての楽曲が収録できなかったため、裏面も使って収録していました。以下のTweet(動画)でクルクル回っている部分がレコードで、その表面と裏面で収録されている曲が異なります。はるか昔のオジイさん世代は、「B面を聴く=レコードを裏返す(儀式的行為)」という形式であったため、「同じアルバムにも関わらず、A面/B面で異なる作風(となる可能性)」という仕様を受け入れていたようです。
思わぬプレゼントが届いた!
— Nao (@ARC_AED) 2018年10月7日
「レコード買っても、再生環境ない」と話したのを覚えていたみたいで、まさかのレコードプレイヤーを頂いた。
針を落とす位置で迷ったり、
針を持ち上げるスイッチを初めて知り、
一曲で円盤の内側まで進む事に驚いたり。
これでMetallicaのレコードが聴ける! pic.twitter.com/XElXmtS3qN
前置きが長かったですが、本作のB面は”5. Stargazer“、”6. A Light in the Black“の2曲です。A面の曲も出来が悪いわけではありませんが、B面曲は別格です。
Stargazerは、オリエンタルなフレーズがスローテンポで繰り返されます。8分を超える大曲でありながら、曲が劇的に展開する事はなく、ただただ壮大。ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団をバックに情熱的に唄うDIO、中間部から終盤へ向けたギターソロは、まさに様式美としか言いようがない。一度魅力に取り憑かれると、帰ってこれなくなる名曲です。この曲はKashmir(Led Zeppelin)と比較されますが、Kashmirはもっとオリエンタル要素が強く、泥臭さを感じさせます。比較して、聴いてみると、より一層楽しめるかもしれません。
一転して、A Light in the Blackは、激しさを感じさせる一曲です。特に、RitchieとTony Carey(Key.)の掛け合いが聴きどころです。Burn(Deep Purple)のように、中間部で延々と弾き続ける二人が、この曲を支えています。RitchieはJazzも嗜むため、中間部で各パートが掛け合う流れは、割と自然に出てきます。その掛け合いが上手く当てはまった例が、本曲です。一聴してハマる事は難しいと思いますが、聴き続けるとその魅力に取り憑かれる筈です。
好きな一曲
A Light in the Black
もう少し、この曲をLiveで演奏して欲しい。
自作のReview
Review: On Stage Deluxe Edition (Rainbow)
Review: Long Live Rock ‘n’ Roll–バビロンの城門–(Rainbow)
ロシア人と国際結婚した地方エンジニア。
小学〜大学院、就職の全てが新潟。
大学の専攻は福祉工学だったのに、エンジニアとして就職。新卒入社した会社ではOS開発や半導体露光装置ソフトを開発。現在はサーバーサイドエンジニアとして修行中。HR/HM(メタル)とロシア妻が好き。サイトに関するお問い合わせやTwitterフォローは、お気軽にどうぞ。
2件のフィードバック
[…] 本作は、Ritchie Blackmoreがアメリカ市場を意識した結果、過去の二作(銀嶺の覇者、虹を翔ける覇者)より楽曲がコンパクトになっています。ただし、リリース時点(1977年)におけるコンパクトさであり、2019年の視点(約40年越しの視点)で聴けば、前作と大差がない重厚さです。 […]
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