Review: Ritchie Blackmore’s Rainbow–銀嶺の覇者–(Rainbow)
収録曲
- Man on the Silver Mountain
- Self Portrait
- Black Sheep of the Family
- Catch the Rainbow
- Snake Charmer
- The Temple of the King
- If You Don’t Like Rock ‘n’ Roll
- Sixteenth Century Greensleeves
- Still I’m Sad
円熟味さえ感じさせるRainbow 1stアルバム
Rockバンドの1st Albumは、「初期衝動」や「荒削りながらも〜」と言った言葉で飾られる機会が多いです。しかし、本作を形容するには、そのような言葉は適切でないでしょう。バンドを率いたRitchie Blackmore(Gt.)は、Deep Purpleでアルバムを9作ほどリリースしていましたし、バックバンドとしてRainbowに吸収されたELF(Deep Purpleの前座バンド、DIOが所属)ですらアルバムを3作リリースしていました。後の作品と比較すると、楽曲一つ一つの方向性はバラバラですが、それぞれの完成度の高さを感じ取れます。
本作の構想は、Ritchieが”Black Sheep of the Family”をDeep Purpleでカバーしようと提案したら、メンバーに拒否された所から始まります。仕方なく、Ritchieは休暇を利用して、ELFと共に”Black Sheep〜”および”Sixteenth Century Greensleeves”(c/w)をシングルとして作成する事になります。シングルの出来栄えが期待以上であったため、Ritchieはアルバムを作成する方針に変更しました。このような背景から、本作は1975年2月20日にレコーディングを開始されましたが、同年の3月14日に完成しています。恐るべく制作スピードであり、意欲的に取り組んだ事が推察できます。
本作は、キラーチューンが存在しないながらも、ファンに愛された曲が多数収録されています。Liveでは激しさが増す”Man on the Silver Mountain”、”Sixteenth Century Greensleeves”、”Still I’m Sad”、歴代のボーカリストによって歌い継がれた”Catch the Rainbow”、物憂げで日本人好みな”The Temple of the King”。どの曲も佳曲であり、アルバム単位で本作を好まないファンも、「この曲は好き!」と言える曲があるのではないでしょうか。
If You Don’t Like Rock ‘n’ Rollから漂うパンク臭
“If You Don’t Like Rock ‘n’ Roll”に対しての感想は、古臭い曲というイメージです。90’sには、この手の楽曲は音楽シーンから姿を消したと思います。少なくとも、90年生まれの私には、初聴時に「うぇっ」ときました。正直に言えば、最初は捨て曲扱いでした。
しかし、腰を据えて曲と向き合ってみたら、パンクを感じてきました。ここで感じるパンクとは、「三大パンクバンド(Clash, Damned, Pistols)」や「ロックとの境界が曖昧な90’s以降のパンク」ではなく、Hanoi Rocksです。
最初はDIOのボーカルが骨太すぎて、Hanoiらしさは感じませんでした。しかし、演奏に耳を傾け始めると、キーボードの小気味良い感じと、アップテンポでキャッチャー(ポップ)な曲調は、Hanoi Rocksを感じさせます。ネットでは同じ意見がありませんし、「そもそもパンクらしさの代表がHanoiか」とツッコミどころは多いです。しかし、私は「Hanoiに似てるな、パンクっぽいな」と感じてから、この曲を好きになれました。
The Temple of the Kingの音飛びが残念
Remaster版やアルバムボックスセット版は、音飛びが確認されています。私が所持しているCDも音飛びしているため、曲中で「チッ」というノイズ音が聞こえます。CD形態のアルバムは音飛びがあるようです。
音飛びを嫌う場合は、LP、シングルボックスセット版、YouTubeのいずれかを聞いて下さい。これらには音飛びがありません。
好きな一曲
Man on the Silver Mountain
Live版の激しさ、ボーカリスト毎の個性を知った後に聞き直すと、音源版の良さが見えてきます。
次作のReview
Review: RISING–虹を翔る覇者–(Rainbow)
ロシア人と国際結婚した地方エンジニア。
小学〜大学院、就職の全てが新潟。
大学の専攻は福祉工学だったのに、エンジニアとして就職。新卒入社した会社ではOS開発や半導体露光装置ソフトを開発。現在はサーバーサイドエンジニアとして修行中。HR/HM(メタル)とロシア妻が好き。サイトに関するお問い合わせやTwitterフォローは、お気軽にどうぞ。
3件のフィードバック
[…] 本作は、前作の“Ritchie Blackmore’s Rainbow(銀嶺の覇者)”と比較して、メンバーチェンジで獲得したCozy Powell(Dr.)のシンプルで力強いドラミングによって、Hard Rock然としたサウンドへと急激に様変わりしています。 […]
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[…] 本作は、Ritchie Blackmoreがアメリカ市場を意識した結果、過去の二作(銀嶺の覇者、虹を翔ける覇者)より楽曲がコンパクトになっています。ただし、リリース時点(1977年)におけるコンパクトさであり、2019年の視点(約40年越しの視点)で聴けば、前作と大差がない重厚さです。 […]