感想: 日本はもはや「後進国」

後進国から脱せられるかはトップ次第?

本書は、バブル景気後の日本が貧しくなった原因を説明した後、日本が再び豊かになる方法論(著者:加谷珪一氏の考え)を示しています。私のようなソフトエンジニアで、経済に興味がない人が読むのに、ちょうどよい分量(219ページ)かつ内容でした。日本の駄目な例として、印鑑問題、電話オジサン、ご挨拶テロ、働かないオジサンなどを知らない人は、是非本書を一読していただきたいです。

本書のタイトルは、実に刺激的。もう日本は遅れている国だと認めなさい、と諭されているようです。平成生まれの社会人にとって見れば、日本が上り調子の時代を知らない訳ですから、日本の未来が暗いのは周知の事実です。その認識でいてもなお、本書のタイトルには興味を惹かれました。

本書では、生産性を「付加価値÷労働量=売上総利益もしくはGDP÷(社員数×労働時間)」という分かりやすい形式で示しています。つまり、生産性について述べる場合、①付加価値、②社員数、③労働時間、の3点について考えれば良いです。この前提を踏まえて、本書では日本における低い生産性の原因は、以下のように分析されています。

低い生産性の原因
  • 付加価値:途上国時代(戦後)における薄利多売のビジネスモデルから脱却していない
  • 社員数 :勉強せず、低いスキルの社員(働かないオジサン)が多い
  • 労働時間:古い慣習(ハンコ文化、電話)が多く、IT化が進んでいない

上記の問題点を改善する場合、自分の努力で対処できるのはスキルを磨く事ぐらいと感じました。「ビジネスモデルの変更」や「古い慣習の撤廃」は、私のような会社づとめ労働者の立ち位置からボトムアップで変えていく事は難しいでしょう。言い換えれば、トップの意識・やり方が変わらない限り、私達は辛い長時間労働に人生を捧げなければなりません。

本書で言及されていたスキルの中で、私がスキルを磨くのであれば①文章能力、②人を信用する能力、③IoT(Internet of Things)の開発能力、でしょうか。特に、③IoTの開発能力に関しては、従来の受託開発・保守・運用は10万人が余剰となり、IoT/AI(人工知能)などの先端分野では55万人も不足するそうで、食いっぱぐれないために(働かないオジサンにならないために)、今のうちにスキルを定着させたい。スキルがあれば、本書で推奨されていたように、転職してしまえば良いのです。

             

本書はSonyとSHARPの復活劇に関しても言及

SonyもSHARPも経営状態が一時期悪化し、経営者が変わった後に利益体質へと変化した事は経済に興味がない私も把握していました。しかし、その復活劇の背景は、理解していませんでした。私のフワッとした認識では「SonyはPS4、カメラのαシリーズ、半導体が好調で復活した」、「SHARPは日本人経営者が勉強しておらず、鴻海の有能な経営者に変わった(復活の理由は曖昧)」といった感じでした。

本書では、両者の復活劇について言及されています。どちらに関しても、当たり前な事を実施して、復活したと書かれています。まず、Sonyは元々Walkmanに代表されるようなヒット商品をリリースし、多額の開発費を後から回収するスタイルだったらしいです。社長が平井一夫氏に交代した後、無駄の排除、つまり、利益の残る部門・資産だけを残し、大規模な人員整理を行ったそうです。

次に、SHARPは元々、コストに甘い会社だったようです。割高な長期契約が蔓延しており、その背景には経営陣の見栄とプライドがあったようです。鴻海による経営再建では契約の見直しが行われたそうですが、過去の契約では担当者レベルでどのようなやり取りが交わされたかが気になる所です。

両社ともに「無駄やコストを見直す事」=「経営の基本(当たり前の事)」を行って、復活したようです。この立ち回り方は知らなかったため、知る機会を得る事が出来て良かったです。

             

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