Review: レオン(完全版)
シンプルなストーリーで描かれた純愛作品
本作のストーリーは、本筋がシンプルであり、話の流れが掴みやすいです。麻薬取締局(警官)に家族(正確には弟)を殺されたマチルダが、隣の部屋に住んでいた殺し屋のレオンに復讐を依頼し、最後に警官とレオン・マチルダが銃撃戦を繰り広げます。警官側にサイコパスなスタンスフォールドがいるせいで、序盤の展開で混乱するかもしれませんが、それ以外は概ね期待を裏切らないストーリー展開です。
家族に虐待されていたマチルダがレオンの優しさに触れて、ラストシーンに至るまでマチルダがレオンに愛を求める流れも共感しやすいです。人によっては復讐劇より、恋愛メインの映画と捉えているかもしれません。私もその一人です。恋愛モノとして本作の良い点は、レオンとマチルダの間に余計な男女が割って入らないので、マチルダ(12歳)の背伸びしつつも子供な部分と、レオンのぎこちない対応を安心して楽しめることでしょうか。
本作はフランスとアメリカ(ハリウッド)の合作にもかかわらず、アメリカらしい派手さはドンパチ(銃撃戦)ぐらいしかありません。作中の雰囲気が全体的に暗く、その原因は孤独な殺し屋であるレオンの暮らしぶりがハードボイルドすぎるからでしょう。時代背景も影響していると思われますが、「子供への虐待シーン」や「エンディングがアンハッピーエンドである点」も、アメリカ映画らしからぬ特徴です。
https://twitter.com/ddoniolvalcroze/status/1183094771612389378
マチルダが嫌いな人は、この映画も嫌いなはず
本編中では、マチルダは「子供の姿をした大人」として描かれています。確かに、初めて人を愛したという発言の後に、
「お腹が温かいの。締め付けられるような感じが消えたわ」
というシーンは印象的ですし、12歳の言動とは思えません。顔つきも大人びており、魅力的です。しかし、それを上回るほどに、子供っぽい言動も多いです。TVでアニメを見たがり、レオンと霧吹きで水かけ遊びに興じたり、夕食を食べながらケタケタと大きな声で笑ったりします。このような姿を見て、マチルダに対してイラッと来る人は映画本編も楽しめない可能性があります。人によっては、「何だ、この他人への迷惑を考えない自分勝手なガキ」と感じる気がします。
マチルダが物語を動かすキーマンなので、マチルダが気に食わない場合、最後まで視聴するのもキツイかもしれません。
完全版と通常版の違い
通常版は、マチルダ(12歳)の描写として不適切な部分が削られました。
- レオンとマチルダが殺しの訓練をするシーン
- マチルダが初仕事祝でシャンパンを飲む(飲酒)シーン
- マチルダがレオンに初体験をお願いするシーン
特に、2.と3.はマチルダの印象を大きく変える描写です。2.のシーンは、飲酒自体は重要でなく、飲酒時の会話でマチルダがあどけなさを示します。マチルダがレオンより若い年齢で殺しを成し遂げた事を知り、ハイになって笑い出します。笑い方が独特であり、レオンも周りの客を気にし始めてオドオドし始めるため、印象に残ります。
3.のシーンは、マチルダがドレスに着替えて、レオンに初体験をせがむシーンです。ドレスに着替えてくる事もそうですが、マチルダが初体験の重要性を語る姿は、12歳の子供に見えません。このシーンを監督の性的嗜好丸出しと捉えるか、ストーリーに変化が起きる瞬間と捉えるかで、印象が変わってきます。
本作のようなストーリーは規制されてしまうか?
Amazonのレビューで、「(レオンは)ロリコン親父が楽しむ映画」と酷評されています。一個人がロリコン扱いされるのは、別に構いません。私が不安なのは、このようなレビュー(人)に配慮し、映画の幅が狭まる事だけです。海外(正確にはアメリカ)は、映画で差別的でない配役を強制しますし、ストーリー構成も勧善懲悪が多いです。
マチルダを演じたナタリー・ポートマンは、
と語っており、表現描写に対する時代の流れを感じます。
確かに、本作のレオンとマチルダの関係も、現実に当てはめると不適切です。レオンはマチルダ(子供)とベットを共にしますし、最後には一緒に暮らす事を望みます(話の展開上、本心ではなく気休めの言葉かもしれないですが)。他にも、マチルダの喫煙・飲酒シーンもアウトでしょう。もっと言えば、完全版で描かれている
しかし、映画(創作物)ですから、私は表現に自由が合った方が好ましいと考えています。特に、本作は直接的な性描写もないため、批判されるほど酷くないと感じています。
ロシア人と国際結婚した地方エンジニア。
小学〜大学院、就職の全てが新潟。
大学の専攻は福祉工学だったのに、エンジニアとして就職。新卒入社した会社ではOS開発や半導体露光装置ソフトを開発。現在はサーバーサイドエンジニアとして修行中。HR/HM(メタル)とロシア妻が好き。サイトに関するお問い合わせやTwitterフォローは、お気軽にどうぞ。