感想: 岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。

任天堂 元社長である岩田 聡氏のインタビュー集

本書は、任天堂の元社長である岩田 聡氏のインタビュー記事をまとめたものです。岩田聡氏は、外部会社であるHAL研究所のプログラマー(後に社長)でありながら、100年ほど同族経営を続けていた任天堂の外様社長に抜擢された異色の経歴を持つ人物です。

岩田聡氏は、優秀なプログラマであり、経営者としても任天堂に多大な利益をもたらしました。プレゼン能力も秀でており、Nintendo Directで「直接!」という印象的なフレーズ・ポーズを用いてユーザを笑わせたり、Game Developers Conferenceでゲーム史に残る名言(以下)を発言しています。

On my business card, I am a corporate president. In my mind, I am a game developer. But in my heart-I am a gamer.

私の名刺には社長と書かれていますが、頭の中はゲーム開発者です。しかし、心はゲーマーなのです。

岩田 聡

岩田聡氏は、メディアに出て、自身の言葉で語る機会が多い社長であったため、

  1. ほぼ日刊イトイ新聞
  2. 社長が訊く
  3. Nintendo Direct

などのWebサイトから、その人柄に触れる事が出来ます。しかし、これらの記事は情報が散逸しており、集約性がありません。Webサイトのページは、その特性上、404 Not Found(消失)となる可能性もあります。このようなデメリットを解消するため、本書が出版されたようです。

本書によって、より気軽に岩田聡氏の言葉を振り返られる状態になりました。本書は、高校〜HAL研究所〜任天堂において、以下の事柄をどのように捉えていたかが記載されています。

本書から読み取れる岩田聡氏の情報
  • 立場(例:開発で先輩が居なかった)
  • 影響を受けた事(例:高校時代の友人)
  • 経験によって理解した事(例:判断とは何か、才能とは何か)
  • 自身のミッション(例:ゲーム人口の拡大)

本書は、岩田聡氏の優しく分かりやすい語り口がそのまま記載されており、読みづらさを感じる事はありません。ただし、インタビュー記事がベースの書籍であるため、岩田聡氏(任天堂)のファンにとっては、目新しい情報が無いかもしれません。「プログラマー寄りのコアな知識」や「任天堂在籍時の具体的な経営方法」も記載がありません。

「岩田聡氏がどんな人物だったか」が気になっている人には、本書はオススメです。

                         

岩田聡氏から真似したい全体最適化

本書から読み取れる事は、岩田聡氏が全体最適化を重視していた点でしょう。岩田聡氏は凄腕プログラマーであるがゆえに、他の人の困り事を解決する立場として語られています。そのエピソードを読むと、「オレ一人の力で、問題解決してやる!」というタイプでは無かった事が分かります。

例えば、4年間かけて開発できなかった「MOTHER2」を1年で完成させたエピソードがありますが、岩田聡氏一人でゲーム開発するのではなく、スタッフ全員がゲームを直せる仕組みを作ったそうです。このアプローチは、客観的に見て健全です。将来的に、一人に作業負荷が集中すること無く、開発者全員がチームに貢献できる訳ですから。

このような問題解決に対する行動は、合理的であるという理由だけでなく、岩田聡氏の「自分や他の人がハッピーであるか(ハッピーであるべき)」という考え方に基づいていると思われます。開発をしていると精神的に追い詰められる事が多々ありますが、「チーム全体がより良くなるには(ハッピーになるには)」を考えながら仕事をしたいと感じました。

そのためには、私も岩田聡氏のように、チームメンバと面談(会話)をする事から始めます。

               

本書に書かれていない岩田聡氏のエピソード

ドラクエの移植を担当した事は、あまり知られていないのではないでしょうか。

また、ポケモン金・銀でグラフィック圧縮ツールを作成して使用容量を削減した事やポケモン戦闘ロジックをN64に一週間で移植した事が「社長が訊く」で語られています。しかも、当時はHAL研究所の社長業務を兼務しつつ、対応していたのだから驚きです(土曜日・日曜日にプログラムを書く鉄人だったそうです)

                

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