Linux Kernel: エラー番号の一覧

前書き

本記事では、Linux Kernelが用いるエラー番号を説明します。

              

Linux Kernelがエラー番号(errno)を正しく返す意義

Linux Kernelでは、エラーの種類に応じて、返すべきエラー番号が定められています。例えば、ファイルが存在しない場合は、”ENOENT(No such file or directory、 エラー番号2)”を返します。Linux Kernel内のエラー内容は、変数errnoを通してUser空間にも伝わります。

Linux Kernel内で誤ったエラー番号を使用した場合、その影響は広範囲に渡ります。Kernel空間は勿論ですが、User空間アプリケーションに本来であれば不要であった判断や対応を強いる事になります。さらに、エラー番号の誤りに気づき、Kernelコードを修正した後もまた、Kernel空間/User空間の両方に影響が出ます。

すなわち、他の人に迷惑をかけないために、Linux Kernelコード内で定義されたエラー番号を正しく使う事が重要になります。ちなみに、Linux Kernelのエラー番号は、以下の特徴があります。

特徴
  • FreeBSD Kernelよりもエラー番号が多い事
  • Linux Kernel内専用のエラー番号がある事

                     

エラー番号の定義ファイル

エラー番号の定義ファイルは、下表の3種類存在します。それぞれのファイルに定義されたエラー番号の意味も後述します(表の中だけ、である調にします)。

PATH 内容
<KERNEL_TOP>/include/uapi/asm-generic/errno-base.h ファイル・リソースの基本的なエラー状態を説明するためのエラー番号(1〜34)
<KERNEL_TOP>/include/uapi/asm-generic/errno.h errno-base.hで表しきれなかったエラー状態を説明するためのエラー番号(35〜133)
<KERNEL_TOP>/include/linux/errno.h Kernel空間のみで使用するエラー番号(512〜518、521〜530)

     

<KERNEL_TOP>/include/uapi/asm-generic/errno-base.h
名称 原文 和訳
EPERM 1 Operation not permitted 許可されていない操作である
ENOENT 2 No such file or directory ファイルまたはディレクトリが存在しない
ESRCH 3 No such process 指定されたプロセスが存在しない
EINTR 4 Interrupted system call シグナル割り込みが発生した
EIO 5 I/O error 入出力エラーである
ENXIO 6 No such device or address デバイスまたはアドレスが存在しない
E2BIG 7 Argument list too long 引数リストが長すぎる
ENOEXEC 8 Exec format error 実行形式が異常である
EBADF 9 Bad file number 無効(異常)なファイル番号
ECHILD 10 No child processes 子プロセスが存在しない
EAGAIN 11 Try again

再実行する事(EWOULDBLOCKも同じ番号)

ENOMEM 12 Out of memory メモリー不足である
EACCES 13 Permission denied 権限が無い
EFAULT 14 Bad address 無効なアドレス
ENOTBLK 15 Block device required ブロックデバイスが必要である
EBUSY 16 Device or resource busy デバイスまたはリソースは使用中である
EEXIST 17 File exists ファイルは既に存在する
EXDEV 18 Cross-device link デバイスをまたぐリンクである
ENODEV 19 No such device デバイスが存在しない
ENOTDIR 20 Not a directory ディレクトリではない
EISDIR 21 Is a directory ディレクトリである
EINVAL 22 Invalid argument 無効な引数である
ENFILE 23 File table overflow オープン済ファイル(ファイルディスクリプタ)がシステム上限に達している
EMFILE 24 Too many open files 開いているファイルが多すぎる
ENOTTY 25 Not a typewriter TTYではない
ETXTBSY 26 Text file busy テキストファイルが使用中である
EFBIG 27 File too large ファイルが大きすぎる
ENOSPC 28 No space left on device デバイスの空き領域が不足している
ESPIPE 29 Illegal seek 無効なシークである
EROFS 30 Read-only file system リードオンリーファイルシステムである
EMLINK 31 Too many links リンクの数が多すぎる
EPIPE 32 Broken pipe パイプが壊れている(既にクライアントでcloseされている状態など)
EDOM 33 Math argument out of domain of func 数値引数が領域外である
ERANGE 34 Math result not representable 結果が大き過ぎる

                                   

<KERNEL_TOP>/include/uapi/asm-generic/errno.h
名称 原文 和訳(補足説明)
EDEADLK 35 Resource deadlock would occur

リソースデッドロックが発生する見込みである。(EDEADLOCKでも定義されている)Kernel内部のデッドロック検知システムlockdepなどで、デッドロック検知時に使われる。

ENAMETOOLONG 36 File name too long ファイル名が長過ぎる
ENOLCK 37 No record locks available 利用できるレコードロックが無い
ENOSYS 38 Function not implemented 関数(system call)は実装されていない。本当に関数が存在しないかどうかを判断するために、system callの実装内で、このエラー番号は使うべきでない。
ENOTEMPTY 39 Directory not empty ディレクトリーが空ではない
ELOOP 40 Too many symbolic links encountered シンボリックリンクの回数が多すぎる
ENOMSG 42 No message of desired type 要求された型のメッセージが無い
EIDRM 43 Identifier removed 識別子は削除された
ECHRNG 44 Channel number out of range チャンネル番号が範囲外である
EL2NSYNC 45 Level 2 not synchronized 同期できていない (レベル2)
EL3HLT 46 Level 3 halted 停止 (レベル3)
EL3RST 47 Level 3 reset リセット (レベル3)
ELNRNG 48 Link number out of range リンク番号が範囲外である
EUNATCH 49 Protocol driver not attached プロトコルドライバがアタッチされていない
ENOCSI 50 No CSI structure available CSI構造が利用できない
EL2HLT 51 Level 2 halted 停止 (レベル2)
EBADE 52 Invalid exchange 不正な交換である
EBADR 53 Invalid request descriptor 無効な要求ディスクリプターである
EXFULL 54 Exchange full 変換テーブルが一杯である
ENOANO 55 No anode inodeが無い(諸説があるエラー番号
EBADRQC 56 Invalid request code 不正なリクエストコードである
EBADSLT 57 Invalid slot 不正なスロットである
EBFONT 59 Bad font file format 不正なフォントファイルフォーマットである
ENOSTR 60 Device not a stream ストリームではない
ENODATA 61 No data available データが無い
ETIME 62 Timer expired 時間が経過した(時間による失効)
ENOSR 63 Out of streams resources ストリームリソースが存在しない
ENONET 64 Machine is not on the network 装置がネットワーク上に無い
ENOPKG 65 Package not installed パッケージがインストールされていない
EREMOTE 66 Object is remote オブジェクトがリモートにある
ENOLINK 67 Link has been severed リンクが切れている
EADV 68 Advertise error Advertiseエラー
ESRMNT 69 Srmount error Srmountエラー
ECOMM 70 Communication error on send 送信時に通信エラーが発生した
EPROTO 71 Protocol error プロトコルエラーである
EMULTIHOP 72 Multihop attempted マルチホップが試みられた
EDOTDOT 73 RFS specific error RFS特有のエラーである
EBADMSG 74 Not a data message データメッセージではない
EOVERFLOW 75 Value too large for defined data type データ型に格納するには値が大きすぎる
ENOTUNIQ 76 Name not unique on network 名前がネットワークで一意ではない
EBADFD 77 File descriptor in bad state ファイルディスクリプターが不正な状態である
EREMCHG 78 Remote address changed リモートアドレスが変わった
ELIBACC 79 Can not access a needed shared library 必要な共有ライブラリにアクセスできない
ELIBBAD 80 Accessing a corrupted shared library 壊れた共有ライブラリにアクセスをした
ELIBSCN 81 .lib section in a.out corrupted .libセクションが壊れている
ELIBMAX 82 Attempting to link in too many shared libraries リンクしようとした共有ライブラリが多過ぎる
ELIBEXEC 83 Cannot exec a shared library directly 共有ライブラリを直接実行できなかった
EILSEQ 84 Illegal byte sequence 不正なバイト列である
ERESTART 85 Interrupted system call should be restarted 中断システムコールは再起動が必要である
ESTRPIPE 86 Streams pipe error ストリームパイプエラー
EUSERS 87 Too many users ユーザー数が多過ぎる
ENOTSOCK 88 Socket operation on non-socket ソケットではない
EDESTADDRREQ 89 Destination address required 宛先のアドレスが必要
EMSGSIZE 90 Message too long メッセージが長過ぎる
EPROTOTYPE 91 Protocol wrong type for socket ソケットに指定できないプロトコルタイプである
ENOPROTOOPT 92 Protocol not available 利用できないプロトコルである
EPROTONOSUPPORT 93 Protocol not supported 未対応のプロトコルである
ESOCKTNOSUPPORT 94 Socket type not supported 未対応のソケットタイプである
EOPNOTSUPP 95 Operation not supported on transport endpoint トランスポートエンドポイントで未対応の操作
EPFNOSUPPORT 96 Protocol family not supported 対応していないプロトコルファミリーである
EAFNOSUPPORT 97 Address family not supported by protocol 対応していないアドレスファミリーである
EADDRINUSE 98 Address already in use アドレスは既に使用されている
EADDRNOTAVAIL 99 Cannot assign requested address アドレスが使用できない
ENETDOWN 100 Network is down ネットワークは不通である
ENETUNREACH 101 Network is unreachable ネットワークは到達不能である
ENETRESET 102 Network dropped connection because of reset リセットでネットワーク接続が失われた
ECONNABORTED 103 Software caused connection abort ソフトウェア要求により接続は中止された
ECONNRESET 104 Connection reset by peer 接続は相手からリセットされた
ENOBUFS 105 No buffer space available バッファーは容量不足である
EISCONN 106 Transport endpoint is already connected トランスポートエンドポイントは既に接続されている
ENOTCONN 107 Transport endpoint is not connected トランスポートエンドポイントは接続されていない
ESHUTDOWN 108 Cannot send after transport endpoint shutdown トランスポートエンドポイントはシャットダウン中であり送信できない
ETOOMANYREFS 109 Too many references: cannot splice 処理限界を超える多重参照である
ETIMEDOUT 110 Connection timed out 操作はタイムアウトした
ECONNREFUSED 111 Connection refused 接続は拒否された
EHOSTDOWN 112 Host is down ホストはダウンしている
EHOSTUNREACH 113 No route to host ホストに到達不能である
EALREADY 114 Operation already in progress 操作は既に実行中である
EINPROGRESS 115 Operation now in progress 操作は現在実行中である
ESTALE 116 Stale NFS file handle NFSファイルハンドルが古い
EUCLEAN 117 Structure needs cleaning 構造のクリーニングが必要である
ENOTNAM 118 Not a XENIX named type file XENIX名前付きファイルではない
ENAVAIL 119 No XENIX semaphores available XENIXセマフォは利用できない
EISNAM 120 Is a named type file 名前付きファイルである
EREMOTEIO 121 Remote I/O error リモートI/Oエラーである
EDQUOT 122 Quota exceeded クォータ超過である
ENOMEDIUM 123 No medium found メディアが見つからない
EMEDIUMTYPE 124 Wrong medium type 間違ったメディアタイプである
ECANCELED 125 Operation Canceled 処理はキャンセルされた
ENOKEY 126 Required key not available 要求された鍵が利用できない
EKEYEXPIRED 127 Key has expired 鍵の期限が切れた
EKEYREVOKED 128 Key has been revoked 鍵が無効となった
EKEYREJECTED 129 Key was rejected by service 鍵がサーバーにより拒否された
EOWNERDEAD 130 Owner died 所有者が死亡した
ENOTRECOVERABLE 131 State not recoverable 状態は回復不能である
ERFKILL 132 Operation not possible due to RF-kill RF-killのため操作できない
EHWPOISON 133 Memory page has hardware error メモリページはHWエラーがあります。

 

<KERNEL_TOP>/include/linux/errno.h
名称 原文 和訳(補足説明)
ERESTARTSYS 512

(無し)

system callが再起動可能である事を示す
ERESTARTNOINTR 513 (無し) systemcallを必ず再実行する
ERESTARTNOHAND 514  restart if no handler. ハンドラが無ければ再実行する 
ENOIOCTLCMD 515  No ioctl command ioctl() が存在しない
ERESTART_RESTARTBLOCK 516 restart by calling sys_restart_syscall sys_restart_syscall()によって、再実行する
EPROBE_DEFER 517 Driver requests probe retry ドライバはprobe(探査、初期化)の再実行を要求している
EOPENSTALE 518  open found a stale dentry

古いdentryを発見した(Openした)

EBADHANDLE 521   Illegal NFS file handle  不正なNFSファイルハンドラである
ENOTSYNC 522  Update synchronization mismatch  更新同期の不一致である
EBADCOOKIE 523  Cookie is stale Cookieが古い 
ENOTSUPP 524 Operation is not supported その操作はサポートしていない 
ETOOSMALL  525  Buffer or request is too small バッファかリクエストが小さすぎる 
ESERVERFAULT 526 An untranslatable error occurred  翻訳(変換)できないエラーが発生した 
EBADTYPE  527  Type not supported by server サーバによって、その型がサポートされていない 
EJUKEBOX 528  Request initiated, but will not complete before timeout リクエストは開始されたが、タイムアウトまでに完了しなかった
EIOCBQUEUED 529 iocb queued, will get completion event  iocbがキューに入れられ、完了イベントが取得される
ERECALLCONFLICT 530  conflict with recalled state  再呼び出し状態での衝突である

                                   

補足:User空間でKernel空間のエラー番号を見る方法

User空間には、Kernel空間のエラー番号を示すerrnoが存在します。以下にerrnoに関するMANページ情報を引用します。

ヘッダーファイル <errno.h> で整数型の変数 errno が定義されており、 システムコールやいくつかのライブラリ関数は、エラーが発生した際に この変数にその原因を示す値を設定する。 この値は呼び出しの返り値がエラー (ほとんどのシステムコールでは -1 で、ほとんどのライブラリ関数では -1 か NULL) を示したときに のみ意味を持つが、ライブラリ関数は成功した場合も errno を変更することが許されている。

有効なエラー番号はいずれも 0 以外の値を持つ。 どのシステムコールもライブラリ関数も errno を 0 に設定することはない。

この変数errnoの取り扱いで、注意すべきポイントが2つあります。

ポイント
  • 関数コール前にerrnoを初期化(エラー番号をセット後、その番号を保持し続けるため)
  • 関数コール後にerrno値を別変数にコピー(errnoは一つしかなく、書き換わる可能性があるため)

以下に、存在しないファイルをOpenしようとし、エラーが発生するサンプルプログラム(および実行結果)を示します。プログラム中で使用している関数perror()は、変数errnoに格納されたエラー番号とメッセージを対応付け、メッセージを標準エラー出力に書き出します。

                               

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